裏切り
大典は、実家に帰り
母の仏壇の前で
父親にかなり叱られた。
「あんな優しくて
頑張りやな千亜季ちゃんを
裏切っただけでなく
その女性を妊娠させた上に
話しもせずに誠意も見せずに
切り捨てるなんて。
人間としてお前は最低だ。
金は出してやる
だが、二度と顔を見せるな。」
父親は、そう言って
俺の名義の通帳と印鑑を
差し出した。
俺が小さい頃から
コツコツためてくれていたもの
だった。
俺は、泣きながら
父親に何度も頭を下げた。
そんな俺に
父親は、一通の手紙を差し出した。
その手紙の差出人は千亜季だった。
離婚に至ったことのお詫びと
父の体を心配する文面が
綴られていた。
俺のやったことには
何一つ触れてなかった。
俺は、自分のやった事を
真剣に考えさせられて
再度、父親にお礼とお詫びをして
実家を後にした。
翌日、哲也さんの事務所に
振り込み、哲也さんに連絡をした。
哲也さんは、淡々と
「領収書をお送り致します。」
と、言って
「もう、これで、会うこともないと
思いますが、大吾さんに
感謝して生きろ。」
と、言われて切られた。
夏海については
夏海自身もみてないし
お腹の子と言われても
実感はないが
それでも、きちんとするべき
だった。