裏切り
陽介さんは、奏多を抱いたまま
母に頭を下げ
「夏海さんとの結婚を
お許し頂けませんか?
私は、子供を望めませんが
夏海さんと奏多君を
全力で守り愛して行きます。」
と、言った。
母は、
「頭をあげて下さい。
私は、夏海と奏多が幸せなら
それで良いのです。
ですが、奏多はあなたの子供では
ありませんが、本当によろしいの
ですか?」
「ありがとうございます。
奏多君は、私の子です。」
と、愛しそうに奏多の頭をなでる。
母は、
「鏡さん、どうぞ二人を
宜しくお願いします。」
と、頭を下げ
「夏海、鏡さんと幸せに
なりなさい。」
と、言ってくれた。
「かあ····さん····」
と、涙を流す私の頬を
鏡さんは、そっと親指で
拭いてくれた。
その日、陽介さんは帰って行った。
翌朝、陽介さんがいないので
大泣きして、泣き止まない
奏多に母も私も手がつけられなくて
今まで、こんなこと
一度もなかったから····
陽介さんに連絡をすると
すぐに駆けつけてくれた。
陽介さんをみつけると
「·····パ····パ···※×※×*+*×」
と、言って抱きついていた。
陽介さんは、ずっと
「ごめんね。ごめんね。」
と、言いながら
奏多を抱き締めていた。
陽介さんのスーツは
奏多の涙と鼻水で
ぐちゃぐちゃになり
私も母も慌ててしまった。
それから、陽介さんと二人で
奏多を保育園に連れていき
挨拶をかねて奏多を預ける。
奏多は、泣いていたが
陽介さんが
「奏多、帰りに迎えに来るから
頑張ろうな。」
と、言うとコクンと頷いて
笑った。
ほっとしながら
私は陽介さんと職場に向かった。
車の中で
改めて、結婚してほしいと
言われて
はい、と返事をした。
私達は、手も繋いだことも
キスやその先もないが
それでも、この人となら
幸せになれると
お互いに思った。
それからは
母の家を改築して
母と同居をする。
陽介さんが
母から奏多を離したくないと
言ってくれた。
今まで母が一緒にいてくれたから
奏多は大きくなったのだからと
私達は、入籍をして
母と奏多と
私達だけでウエディングドレスや
タキシードを着て写真をとった。
陽介さんは、背も高く
40を過ぎてるようには
見えないダンディーなイケメンだ。
私は、四人で写る写真を
奥菜先生へ送った。
どうぞ、千亜季といつの日か
会える日がきますようにと。