ホワイトデーは甘くして?
ふうっと息を耳に吹きかけられ、皐月の体がびくりと揺れる。耳が刺激に敏感なのだ。

「んっ。くすぐったい……」

皐月が体をよじると蒼太は「ちょっと待ってて」とソファから離れた。そして、かばんの中からラッピングされた箱を取り出す。

「それは何?」

「ホワイトデーのお返し」

箱を受け取った皐月は、ゆっくりリボンを解く。中に入っていたのは、月がモチーフになったネックレスだった。

「綺麗……」

「つけてあげる」

皐月は体を起こし、蒼太にネックレスを渡す。蒼太は優しい手つきでネックレスをつけてくれた。優しく触れる指の感触が心地よく、皐月は目を細める。

「蒼太くん?」

ネックレスをつけ終えても、まだ蒼太は皐月から離れようとしない。蒼太はしばらく皐月の首すじを見つめた後、そこに唇を落とす。

「あっ……」

「うん、よく似合ってる」

皐月の首には、蒼太のプレゼントしてくれたネックレスと、赤い印が付いている。それを見て蒼太は満足そうにしていた。
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