渇愛の姫


どうして結雅がそんな顔をするのかわからない。


「私がその子の彼氏寝取ったとか言われて、水かけられて。…苦しくて、泣きたかったけど涙、出なくて」

本当は苦しくて悔しくて、…少し怖かった。


このまま死んでしまう恐怖も、寒くて寂しいっていう孤独感も。



「泣けなかったのっ…」



どうしてこんなことをしてくれるのかな。










「今泣けるなら泣け。…我慢しなくていい」


さっきまで冷たいと思っていた手は温かく感じた。

抱きしめられている、結雅の体の全部が温かい。




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