渇愛の姫


『そして蒼空。蒼空はいつも冷静沈着で、みんなの事を何よりも気にかけていたよね。私のこともいつも心配してくれて。お兄ちゃんみたいで私もついわがまま言っちゃって。けど、そんなわがままも全部許してくれてありがとう。』


蒼空はただじっとしていた。笑っても、泣いてもいない感情が抜けたまるで人形のような顔の蒼空をその時俺は初めて見た。




『最後に──結雅。』


結雅は近くにある電気屋のテレビの方を向いていてどんな顔をしているのかわからない。


無常にも録音された声だけが流れていく。




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