聖☆ドラゴンガール みらくるず
そして、今日、子どもたちの名前を披露する日が来た。
1番目の子は、桃花が。2番目の子は、俺が付ける事に決まっていた。
桃『あ〜…、ドキドキする〜。』
竜『大丈夫だよ、桃花。自信を持って付けた名前なら、誰も何も言わないから。な?』
桃『…うん、そうだね。…ありがと、竜牙…。』
老師1「では、竜牙から。」
竜「はい。」
竜牙は、少し緊張した面持ちで聖殿(せいでん)に立ち、ふ~っと深呼吸し、一拍置いてから、父親らしい顔つきで、堂々と披露した。
竜「この子の名前は、杏樹(あんじゅ)と、付けました。杏(あんず)が、樹に実れば実る程、強く育つようにと、名付けました。」
老師1「良い名前を付けたな、竜牙。」
虹「私も、同感だ。」
竜「ありがとうございます。」
老師2「では、桃花。」
桃「は、はい!この子は、樹理亜(じゅりあ)と言います。樹木の理(ことわり)を1番に考えられる様にと、私が付けました。」
竜『何もそんなに緊張しなくてもクスクス』
桃(竜牙のやつ、後でシメる!!💢💢)
老師3「うむ。地に足が着いている、どっしりとした良い名だ。」
桃「あ、ありがとう…ござい、ます。」
桃花は、その一言で、我慢していた涙が1筋スゥっと流れた。そんな桃花の気持ちを知ってか知らずか、虹龍は、桃花に少し厳しい、アイコンタクトを送ってきた。
虹《……ッ。桃花…。分かっているな?》
桃《!…はい。》
竜《桃花と虹龍、何を考えている?》
2人の気配を怪しんだ竜牙は、チラッと、桃花を横目で見やれば、虹龍とバッチリ目が合った。赤く澄んだ瞳の奥に、どこか気まずさを覚えさせるものだった。その目に、竜牙は、これでもかというくらい目を見開いた。そう。胸騒ぎを悟った。慌てて、隣に座っている桃花を見やると、下唇を噛み締めて、泣くのを必死に堪えていた――。
香港煌家香港煌家を始め、横浜煌家も2人のお披露目会に参加しており、次々に祝辞を述べていたが、桃花には、上の空で、挨拶を交わしていた。そんな桃花を心配した春蘭は、居ても立ってもいられないといったように、桃花の元へと駆け付けた。
春「桃花…。」
久しぶりに親友の声を聞いた桃花は、思わず泣き崩れてしまった。
桃「春…蘭…。」
その一言が、今、桃花が発せられる精一杯の言葉だった。
老師1「では、双子のお披露目会は、これにて終わ…
虹「お待ち下さい!老師。」
普段、老師の言葉を遮ることのない虹龍が、突然凛とした声を上げた。
その場にいた、桃花を除く全員は、目が点になっていた。
老師1「フム。どうした?虹龍。」
虹「実は、桃花には、もう1つ名前を考えてもらったんです。」
老師2「…と、言うと?」
虹「1番目に、産まれてきた子を呪術師にと考えていまして。もちろん、桃花の許可は、得ています。」
竜「な、何…!?」
虹「すまない、竜牙。本来ならば、父親であるお前に、真っ先に話さなければいけなかったのに、順序が逆になってしまったな。」
竜「そんなことを言ってるんじゃない!なんで、『樹理亜を呪術師として、育てる必要があるんだ』と、聞いているんだ!!」
虹「それは、この子に、その資質があるから、伸ばしたいだけだ。」
竜「なに!?」
虹「この子は、不思議な力を持っている。世界を掌握出来るほどの力を――。」
竜「だ、たからって――!」
虹「竜牙、お前の想いは、よく分かる。と、言いたいが、実のところ、私は、あまりわからない。大切な人がずっと、傍にいないからかもしれないが―。せっかく2人揃って産まれて来てくれたのに、“1人だけ香港(こっち)で離れ離れで、育てなければいけない”という悲痛な想いは、流石に痛い程、伝わってくる。
だが、分かってくれ、竜牙!横浜煌家の、長女として、強い力を持って産まれたこの子には、きちんと稽古と修行をして力をつけて貰わなければ、宝の持ち腐れになってしまうんだ!!力を制御出来るようになれば、この子は、必ず、必ず!2人の元に返す。何年掛かろうとも…。私達が総力を挙げて稽古と修行を付ける!だから、頼む、竜牙!!」
蓮宝「私からも、お願いします。竜牙。」
宝「僕からも!竜牙、お願い!!」
香港煌家の従兄弟達からここまで頼み込まれては…。
特に、虹龍は、香港煌家の跡取り息子でもある。
竜牙に残された選択肢は、もう1つしか、残っていなかった。チラッと桃花を横目で見遣れば、“腹を決めた”と言わんばかりの顔をしていた。ならば、俺が出来るのは、1つだけ――。
虹龍(アイツ)の顔を立てる訳では無いが、結果的にそうなってしまった事が、とても悔しいのだ。
竜「………。」
はぁ。と、1つ、大きなため息を3人の前でした。
その溜め息に、3人は、怒られると思って、肩を竦め両目を瞑ったが、竜牙は、虹龍の前まで来ると、しゃがみ込み、彼の右肩にポン、と手を置いた。
温かなぬくもりを右肩に感じ、ふと顔を上げると、そこには、穏やかな笑顔で、『“そこまで言うのであれば、頼む。樹理亜を鍛え上げてくれ。”』と言う竜牙なりの肯定だった。
それを汲み取った虹龍は、感極まり、竜牙の左腕を思いっきり引っ張り、自分の胸に抱き寄せ、竜牙を抱きしめた。香港煌家の頭領が、横浜煌家の者を自らの腕(かいな)に抱き締めるというのは、初めての事で、周りの者は、もちろん、抱き寄せられた竜牙でさえ、戸惑いを見せたが、次第に頭が冷えていき、“これが現実なんだ”と自覚するのに時間は、然程(さほど)掛からなかったが、虹龍の腕の中は、思っていたより暖かく、何故か安心した自分がいた。
竜「…う。ふ、っく。」
虹「遠慮するな。泣きたい時は、大声を上げて泣けば良い。」
虹龍のその一言で、竜牙の張り詰めていた気が緩み、18年間生きて来た中で、涙を堪えきれず、虹龍の首に腕を回し、まるで、小さな子どもの様に、大声を上げて泣きじゃくった。
竜「ッ、うわあああぁァァ!!樹理亜、樹理亜ぁぁ…!」
そんな竜牙を虹龍は、静かに抱き締め、頭を優しくまるで、大切なものを愛おしむかの様に撫でていた――。
その瞳には、薄っすらと暖かい水が溜まっていた。
――しばらくお待ち下さい――
かちゃ。
ぱたん。
スタスタスタ。
竜牙は、寝間着姿のまま、上着も着ずに、宛もなく、ベランダに出た。
その後ろ姿を、虹龍は、じっと見つめていた。
ヒュウウウ。
夜の風は、逆上せきった、頭を冷やしてくれる。
気分転換には、もってこいだ。
竜「…ふぅ。今日は、結構風があるな。早いとこ夜風に当たってから寝よう。」
そう独り言を言ったのに、タイミング良く虹龍が、その言葉を引き継ぎながら、姿を現した。
虹「そうだ。さっさと寝ろ。と言いたいところだが、やっぱり、ここに居たのか。今夜の風は冷たすぎる。こんな薄着で、上着も着ずに…。寒かっただろう...。ほら、無いよりは、マシだろう。私ので良ければ、着たら良い。」
竜「...ありがと、ございます。」
竜牙は、虹龍に一言礼を言うと、結構寒かったのか、素直に受け取り着た。
そんな竜牙を横目で微笑みながら見ていた。
竜「暖かい…。」
虹「今まで、私が着ていたんだ。暖かいに決まってるだろう。」
竜「何時も思うんですが、その根拠のない自信は、何処から来るんですか?」
虹「さてな。私にも分からん。だが、そう言えば、皆は不安に思わないからな。安心させる為に言っている節がある。と、思う。」
ズルッ!!
竜「結局の所、『自分は、自信家だ!』と、言いたいんですね。ハァ=3」
虹「竜牙、貴様…。よくもまぁ、言いたい放題言ってくれたな。まぁ良い。本題は、樹理亜の事だ。」
竜「はい。」
樹理亜の名前を出され、竜牙は、姿勢を正した。
虹「呪術師名が、決まった。『煌 龍林』だ。」
竜「煌 龍林…。林の中で龍を手懐け、自由自在に操れる様、強くなる…。良い名前ですね。誰が付けたんですか?」
虹「桃花だ。」
竜「」
1番目の子は、桃花が。2番目の子は、俺が付ける事に決まっていた。
桃『あ〜…、ドキドキする〜。』
竜『大丈夫だよ、桃花。自信を持って付けた名前なら、誰も何も言わないから。な?』
桃『…うん、そうだね。…ありがと、竜牙…。』
老師1「では、竜牙から。」
竜「はい。」
竜牙は、少し緊張した面持ちで聖殿(せいでん)に立ち、ふ~っと深呼吸し、一拍置いてから、父親らしい顔つきで、堂々と披露した。
竜「この子の名前は、杏樹(あんじゅ)と、付けました。杏(あんず)が、樹に実れば実る程、強く育つようにと、名付けました。」
老師1「良い名前を付けたな、竜牙。」
虹「私も、同感だ。」
竜「ありがとうございます。」
老師2「では、桃花。」
桃「は、はい!この子は、樹理亜(じゅりあ)と言います。樹木の理(ことわり)を1番に考えられる様にと、私が付けました。」
竜『何もそんなに緊張しなくてもクスクス』
桃(竜牙のやつ、後でシメる!!💢💢)
老師3「うむ。地に足が着いている、どっしりとした良い名だ。」
桃「あ、ありがとう…ござい、ます。」
桃花は、その一言で、我慢していた涙が1筋スゥっと流れた。そんな桃花の気持ちを知ってか知らずか、虹龍は、桃花に少し厳しい、アイコンタクトを送ってきた。
虹《……ッ。桃花…。分かっているな?》
桃《!…はい。》
竜《桃花と虹龍、何を考えている?》
2人の気配を怪しんだ竜牙は、チラッと、桃花を横目で見やれば、虹龍とバッチリ目が合った。赤く澄んだ瞳の奥に、どこか気まずさを覚えさせるものだった。その目に、竜牙は、これでもかというくらい目を見開いた。そう。胸騒ぎを悟った。慌てて、隣に座っている桃花を見やると、下唇を噛み締めて、泣くのを必死に堪えていた――。
香港煌家香港煌家を始め、横浜煌家も2人のお披露目会に参加しており、次々に祝辞を述べていたが、桃花には、上の空で、挨拶を交わしていた。そんな桃花を心配した春蘭は、居ても立ってもいられないといったように、桃花の元へと駆け付けた。
春「桃花…。」
久しぶりに親友の声を聞いた桃花は、思わず泣き崩れてしまった。
桃「春…蘭…。」
その一言が、今、桃花が発せられる精一杯の言葉だった。
老師1「では、双子のお披露目会は、これにて終わ…
虹「お待ち下さい!老師。」
普段、老師の言葉を遮ることのない虹龍が、突然凛とした声を上げた。
その場にいた、桃花を除く全員は、目が点になっていた。
老師1「フム。どうした?虹龍。」
虹「実は、桃花には、もう1つ名前を考えてもらったんです。」
老師2「…と、言うと?」
虹「1番目に、産まれてきた子を呪術師にと考えていまして。もちろん、桃花の許可は、得ています。」
竜「な、何…!?」
虹「すまない、竜牙。本来ならば、父親であるお前に、真っ先に話さなければいけなかったのに、順序が逆になってしまったな。」
竜「そんなことを言ってるんじゃない!なんで、『樹理亜を呪術師として、育てる必要があるんだ』と、聞いているんだ!!」
虹「それは、この子に、その資質があるから、伸ばしたいだけだ。」
竜「なに!?」
虹「この子は、不思議な力を持っている。世界を掌握出来るほどの力を――。」
竜「だ、たからって――!」
虹「竜牙、お前の想いは、よく分かる。と、言いたいが、実のところ、私は、あまりわからない。大切な人がずっと、傍にいないからかもしれないが―。せっかく2人揃って産まれて来てくれたのに、“1人だけ香港(こっち)で離れ離れで、育てなければいけない”という悲痛な想いは、流石に痛い程、伝わってくる。
だが、分かってくれ、竜牙!横浜煌家の、長女として、強い力を持って産まれたこの子には、きちんと稽古と修行をして力をつけて貰わなければ、宝の持ち腐れになってしまうんだ!!力を制御出来るようになれば、この子は、必ず、必ず!2人の元に返す。何年掛かろうとも…。私達が総力を挙げて稽古と修行を付ける!だから、頼む、竜牙!!」
蓮宝「私からも、お願いします。竜牙。」
宝「僕からも!竜牙、お願い!!」
香港煌家の従兄弟達からここまで頼み込まれては…。
特に、虹龍は、香港煌家の跡取り息子でもある。
竜牙に残された選択肢は、もう1つしか、残っていなかった。チラッと桃花を横目で見遣れば、“腹を決めた”と言わんばかりの顔をしていた。ならば、俺が出来るのは、1つだけ――。
虹龍(アイツ)の顔を立てる訳では無いが、結果的にそうなってしまった事が、とても悔しいのだ。
竜「………。」
はぁ。と、1つ、大きなため息を3人の前でした。
その溜め息に、3人は、怒られると思って、肩を竦め両目を瞑ったが、竜牙は、虹龍の前まで来ると、しゃがみ込み、彼の右肩にポン、と手を置いた。
温かなぬくもりを右肩に感じ、ふと顔を上げると、そこには、穏やかな笑顔で、『“そこまで言うのであれば、頼む。樹理亜を鍛え上げてくれ。”』と言う竜牙なりの肯定だった。
それを汲み取った虹龍は、感極まり、竜牙の左腕を思いっきり引っ張り、自分の胸に抱き寄せ、竜牙を抱きしめた。香港煌家の頭領が、横浜煌家の者を自らの腕(かいな)に抱き締めるというのは、初めての事で、周りの者は、もちろん、抱き寄せられた竜牙でさえ、戸惑いを見せたが、次第に頭が冷えていき、“これが現実なんだ”と自覚するのに時間は、然程(さほど)掛からなかったが、虹龍の腕の中は、思っていたより暖かく、何故か安心した自分がいた。
竜「…う。ふ、っく。」
虹「遠慮するな。泣きたい時は、大声を上げて泣けば良い。」
虹龍のその一言で、竜牙の張り詰めていた気が緩み、18年間生きて来た中で、涙を堪えきれず、虹龍の首に腕を回し、まるで、小さな子どもの様に、大声を上げて泣きじゃくった。
竜「ッ、うわあああぁァァ!!樹理亜、樹理亜ぁぁ…!」
そんな竜牙を虹龍は、静かに抱き締め、頭を優しくまるで、大切なものを愛おしむかの様に撫でていた――。
その瞳には、薄っすらと暖かい水が溜まっていた。
――しばらくお待ち下さい――
かちゃ。
ぱたん。
スタスタスタ。
竜牙は、寝間着姿のまま、上着も着ずに、宛もなく、ベランダに出た。
その後ろ姿を、虹龍は、じっと見つめていた。
ヒュウウウ。
夜の風は、逆上せきった、頭を冷やしてくれる。
気分転換には、もってこいだ。
竜「…ふぅ。今日は、結構風があるな。早いとこ夜風に当たってから寝よう。」
そう独り言を言ったのに、タイミング良く虹龍が、その言葉を引き継ぎながら、姿を現した。
虹「そうだ。さっさと寝ろ。と言いたいところだが、やっぱり、ここに居たのか。今夜の風は冷たすぎる。こんな薄着で、上着も着ずに…。寒かっただろう...。ほら、無いよりは、マシだろう。私ので良ければ、着たら良い。」
竜「...ありがと、ございます。」
竜牙は、虹龍に一言礼を言うと、結構寒かったのか、素直に受け取り着た。
そんな竜牙を横目で微笑みながら見ていた。
竜「暖かい…。」
虹「今まで、私が着ていたんだ。暖かいに決まってるだろう。」
竜「何時も思うんですが、その根拠のない自信は、何処から来るんですか?」
虹「さてな。私にも分からん。だが、そう言えば、皆は不安に思わないからな。安心させる為に言っている節がある。と、思う。」
ズルッ!!
竜「結局の所、『自分は、自信家だ!』と、言いたいんですね。ハァ=3」
虹「竜牙、貴様…。よくもまぁ、言いたい放題言ってくれたな。まぁ良い。本題は、樹理亜の事だ。」
竜「はい。」
樹理亜の名前を出され、竜牙は、姿勢を正した。
虹「呪術師名が、決まった。『煌 龍林』だ。」
竜「煌 龍林…。林の中で龍を手懐け、自由自在に操れる様、強くなる…。良い名前ですね。誰が付けたんですか?」
虹「桃花だ。」
竜「」