"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
思っていたよりも野菜を消費するのは大変だということに気づいた。
大根一本どころか、半分消費するのに朝昼晩食べてようやく、といったところだ。このペースじゃ絶対に消費し切れず腐らせる。
そう考えた俺は、二人を誘った。もちろんその二人とはあの二人のことで。
「いぇーい!お宅訪問第三回目!」
「は!?三回目!?」
「この前、ゆ〜君ちに泊まったからね!ね〜?」
「お前よりも学部のやつとか高校のやつの方が泊まりに来てるけどな」
「そんなっ!」
さっきまで、酒井に対して優越感に浸っていた筈の千葉崎だったが、途端にその優越感は消え去って、酒井は「はんっ!」と、鼻で笑った。
しかし、千葉崎だ。
「まぁ、いっか!俺は酒井よりもこの家に来てるんで?」
「たった一回だけしか違わないでしょ!」
バチバチと目線を送り、睨む酒井だが千葉崎はヘラっとしていて効果はない。
そんなしょうもないことで争うなよ。
やれやれと、肩をすくめていると隣からクスクスと可愛らしい笑い声が聞こえてきた。
「あの二人、仲良いよね」
「喧嘩するほど何たらっていうやつかもね」
「あ〜!」と、手を合わせ、納得した様子の千葉崎の彼女、原田莉乃。
金髪ゆるふわパーマのチャラい千葉崎の見た目とは違って、染めていない黒髪は真っ直ぐに肩で揃えられ、清楚で可愛らしい女の子だ。
認めたくはないが、千葉崎は顔の作りがいい。
原田も可愛いのでお似合いのカップルだと思う。
しかも、二人はめちゃくちゃ仲がいい。
だけど、系統が全く違っているのでどうやって付き合うに至ったのか、いつも不思議で仕方がない。