"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
この日、千葉崎と原田はデートをする予定だった。
二人が恋人のためだけに使う時間だった。
けれど、千葉崎は喜んで来たし、原田もそれを許した。
四人で鍋を囲んでいる間もみんな楽しく食事を摂っていた。
酒井と原田のそれぞれの大学の話を聞いたり、俺たちの大学の癖のある教授の話をしたり。
皿洗い中に意味深なことを呟いた千葉崎だったが、その後もいつも通りの彼だった。
だけど、妙に気にかかり、少しでも二人の時間を増やそうと帰り際の酒井を呼び止めて、先に二人を帰した。
千葉崎は俺と酒井のことを冷やかしてから帰っていった。
「あのさ、大根がまだたくさん庭にあってさ、なんか保存方法知らない?」
「えーーー?そんなの知らない。スマホで調べれば出てくるんじゃないの?」
「そうなんだけどさー」
それを言われたらお終いだ。
他に何か引き止める方法がない。
「二人きりにさせたかったんでしょ?」
酒井がため息を吐きながらスマホを操作しだした。
「よく分かったな」
「んー。今日二人デートだったからね。……それになんか、」