"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる


「で、悠介はどんな大根料理を作るの?それによって保存の仕方も変わってくるんだけど」

どんな大根料理?そもそも大根を使った料理って鍋とおでん以外に何があるんだ?

そこまで考えていなかった俺は腕を組み、頭を傾げてみるが思いつかなった。

「……分かった。適当に切るわ」

「サンキュー」

「ジップロックはあるよね?」

「そんなんないけど」

「だめじゃん!!」

この後酒井にジップロックは常備しておけと叱られ、彼女を送ったついでにスーパーで買った。

切りに来てくれると言ってくれたけど、俺がバイトを詰め込みすぎていたせいで酒井の予定と合わず、自分で切って保存することにした。

酒井はなんだかんだ言いつつも、保存方法を調べてくれたり、わざわざ切りに来ようとしてくれる。

天邪鬼というかツンデレというか。

可愛くはないけど、いい奴だ。


「電車に乗ったらリンクを送るから帰ったらすぐにやりなよ?」

そう言った酒井だったが、その日はメッセージは来ず、次の日に来た。

電車に乗ったら、と言っていた酒井。
こういう時、彼女は有言実行で、約束通りすぐに送ってくるはずだった。

珍しいこともあるもんだと、俺は一向にこないメッセージに大根の保存を後回しにした。



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