"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる




この日、酒井と千葉崎を鍋に誘わなかったら。

四人でさえ集まらなければ。
皿洗いに千葉崎を指名したりしなければ。

とにかく、酒井と原田を二人きりにはしなければ良かったのか。

それとも、帰り際に酒井を呼び止めなければ良かったのか。


どれだけああしなければと思っても、この時にはすでにもう、どうしようもなかったのかもしれない。

結局、何もしなくてもいずれは壊れていたかもしれない。

けれど、壊れなかったものもあったはずだ。


例えば、一年後に一組のカップルが別れてしまうこと。

……俺と千葉崎と酒井の関係が壊れてしまうこともなかったのかもしれない。



それらが、この日、酒井が原田に伝えた感謝が引き金となって連鎖的に酒井と千葉崎が駅で出会ってしまったことが一つの決定打になってしまったと。



俺は後に知ることになる。



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