"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「よろしく」
もうすぐで年末。
年末年始は実家で過ごすことにしている。
お裾分けとしてジップロックに保存した大根をいくつか渡す予定ではあるが、おせちもある。
三パック分は渡すにしても、残りは自分でなんとか消費したい。今までは鍋で食べてきたが、そろそろ違うものが食べたいところだ。
今度帰るときに調理器具を買い揃えないとなぁ。
今まで料理をしなさ過ぎて調理器具がほとんどない。
将来的に自炊できるようになっておきたいし、そろそろ真剣に料理と向き合わなくては。
そんなことを考えながら、今年最後の草抜きをし終わり、背筋を伸ばす。
すると、バサッ、バサッと、隣から洗濯物を干す時の音が聞こえてきた。
ふわりと真っ白なシーツが空に舞い、重力に負けて洗濯物竿の上に落ちる。
真っ白な息を吐きながら風に飛ばされないように端と端に洗濯バサミを付け、シワ一つなさそうなシーツをじっと見つめ出した。
はぁ、とまた一つ、白い息が空気に消える。
それから洗濯カゴに入っていたもう一つのシーツを取り出して干し出した。
俺は見つからないようにそっと縁側から家に入り込もうと、窓に手を掛けた。