"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
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大晦日。誕生日。
一年の終わりと共に自分の誕生日も終わる。

平家で過ごす大晦日はこれで二回目だった。

来た時は二十八才だった琴音もついに三十歳になってしまった。


「うう、寒い」

タイマーをかけていた暖房は朝には切れてしまって部屋は寒い。

けれど、廊下は暖かい。居間の暖房が効いているからだ。しっかり加湿器もついている。

大洋が琴音よりも早く起きた時は必ずそうだった。

夏は窓を開けたり、冷房をつけたりしてちょうどいい温度にしてくれている。

逆に琴音が早く起きれば同じ事をする。それはこの平家に来てから自然としていたことだった。


「おはよう」

「……おはよう。悪い。ちょっとだけ」

「ゆっくりどうぞ〜」

琴音には追いつけないスピードで大洋がカタカタとキーボードを打っている間に冷蔵庫を一段ずつ開けて確認する。

悠介の手伝いもあって片付いた冷蔵庫。

実家から帰ってきた時に急いで食べないといけないものはないけれど、今日一日を過ごすには食べ物が少ない。

まだ暫くは大洋の仕事も終わらないだろう。

身支度を済ませるため、洗面所に向かった。
後ろの髪が跳ねている。試しにブラッシングしてみるけれど、ピョンっと跳ねた髪は頑固だった。

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