"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
バレなきゃってなんだ。
バレてもバレなくても浮気は浮気だろ。
口元に笑みは残したまま、冷ややかな目で見つめ、目の前の女に顔を近づける。
期待したのか嬉しそうな顔をする女の耳元で囁くように言った。
「俺、お前みたいなビッチって大嫌いなんだよね」
女は顔を真っ青にして硬直していた。
追って来なかったことにホッとしつつ電車に乗る。
流石にあそこまで言われて付いてこようとは思わないだろうが、もし付いてきた場合のことを考えるだけでも疲れる。
はぁ、と深くため息をつき、座席に深く腰掛けてさっ
き言った言葉を思い出す。
「大嫌い、ねぇ。………どの口が言えるんだか」
自分に呆れつつ、目を閉じて彼女の姿を思い浮かべた。