"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる



悠介がコートの中へ入る。
部活ではないので、お遊び程度のバスケは緩い。

声や仕草で煽り合って、ボールを取り合う様はなんとも楽しそうだ。

だが、入れ違いで栄太の側に座る絵里はどんよりとした空気を醸し出していた。

分かりやす〜。

栄太は思わず笑みが溢れてしまう。

口から溢れる言葉の大抵が照れ隠しだったり、憎まれ口であったりで素直な言葉が出てくればレア(栄太調べ)の絵里だが、態度や行動に全て出てしまうので見ている側からすれば非常にわかりやすい。

いつもの如く、栄太と少しだけ距離を開けて座る絵里に徐々に詰め寄って行く。

彼女は全く気付いていなかったので、耳元でわざと「気になる?」と囁いてみる。

パッと耳を押さえて、距離を取られた。


「合コンの話、教えてあげようか?」

そういうと心底嫌そうな顔を向けられた。

暫くコートを見つめ、珍しく「教えてください」と、お願いしてきたので、合コンの日時と場所を含めた詳細を話した。


「急にどうしたの?彼女欲しいなんてそぶり一度も見せなかったのに」

「さぁ、そろそろ独り身が寂しくなってきたんじゃない?」

合コンの情報はいくらでも提供するが、流石に友人の込み入った話を許可なく話すことはしない。

なるべくオブラートに包んで話すのは神経を使うが、不得意ではなかった。


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