"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「相沢さんのことはもういいのかな」
「さぁねぇ。相沢さんのことは知らないけど、とりあえず彼女欲しいんでしょ。まぁ、俺らにバレてムキになっちゃってるところもあるだろうし、今回で彼女を作るのは間違い無いんじゃない?」
確率としては半々だった。
揶揄われるのを阻止しつつ琴音を忘れるために彼女を作るか、結局彼女が欲しいわけではないことに気付いて作らないか。
どちらかは栄太でも予測がつかなかったが、絵里には少々盛って話すくらいが丁度いい。
栄太の情報操作にまんまと嵌った絵里は顔を覆って俯いた。
彼女にとっては困った状況でもあるが、逆に言えばチャンスでもあるが、後者には気付いていないのだろう。
「誰でもいいなら私が彼女になりたい」
「……告白する勇気もないくせにそれを言う?」
思っていたよりも厳しい言葉が口をついてしまった。
絵里は顔から手を離して「ほんとそれ」とか細い声で返した。
「酒井が今のこの関係を壊してでもゆ〜君に告白するって言うなら協力するよ」
「協力って?」
「今週末の合コンに乗り込んで、告白」
「はぁ〜!?」
余程驚いたのか声が大きすぎて周りの視線が二人に集中した。
絵里は気まずそうに栄太の側に寄って「衆人環視の中で言えっての!?」と、今度はヒソヒソ声で言ってくる。
普段は警戒して寄ってこないチワワが珍しく心を許してくれたような気がして、栄太はどことなく嬉しかった。
「ちゃんと二人きりにさせてあげるよ」
「合コンの時に合わせる必要あんの?」
「分かってないなぁ〜。合コンでお酒飲むだろ?酔ったら判断力鈍ってOKしてくれるかもしれないじゃん。正直、素面じゃ断られる確率高い」