"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「今週告白するしか道はないってこと?急すぎ。心の準備できるわけないじゃんもう〜」
「ゆ〜君に彼女できていいならそれでいいんじゃない?」
「……あんた実は応援する気ないでしょ?」
答えに詰まった。
これまで絵里の背中を突いて悠介とくっつかせようとするのが楽しみだった。悠介は鈍感で、絵里は素直じゃないせいでちっとも交差しないモダモダ感を見ているのは面白かった。
しかし、さっきから自分が言っていることは後押しするのとは逆のことばかりだ。
「そんなことないよ〜」
「どうだか」
疑いの目を向ける絵里に苦笑する。
絵里はすぐにコートに視線を戻し、彼を追った。
悠介は高校でバスケ部に所属していただけあってこの緩いミニゲームは手を抜いていても上手い。
仲間にパスを送るのも、ある程度戯れてからゴールを決めるのも見ていて楽しい。
この姿に惚れる女子を栄太は何人か見てきたがサークルは暗黙の了解で絵里に遠慮している節があり、アプローチに至る子は今のところいない。
だが、それがいつまで続くか。
本気で好きになってしまったら、そんな暗黙の了解なんて関係ない。
「これ逃したら、ゆ〜君への恋心が無くなるまでずーっとそのままだろうね」
「うん」
真っ直ぐに一人を見つめる彼女の目に強い意志が宿っていた。
急すぎるとか心の準備がと言いつつ、もう絵里の中では告白すると決めていた。