"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる


そんなやりとりをしている間に悠介を心配してか、一人だけ戻ってきた子がいた。

早く行かなければならない。

けれど、言っておかなければならないことがあった。


「告白したら友達には戻れないし、もう三人で一緒にいることもできないよね」

揶揄われるのは面白くないし栄太のことはそんなに好きではない絵里だが、それでもこの二年、三人で過ごして来た日々は大切なものだった。

この告白で失われるかもしれないけれど、何もしないで指を咥えて待つ赤子のようにはしていられない。

もう覚悟を決めた。


「千葉崎、今までありがとう」

憎らしいけれど栄太には感謝はしている。
絵里はできるだけ精一杯笑って前に進んだ。


絵里は栄太に滅多なことでは笑顔を見せないのに、こんな時に限って笑顔を見せる。

悠介がいないなら会う理由がない。
三人だから一緒にいる。

だから、これが最後かのようにそんな顔を見せたのだ。

「悠介に部屋番聞いたらメッセージ送れよ〜」


恐らくもう悠介の友人から部屋番号が送られている頃だが、敢えて絵里に送るように言う。

これが最後になんてさせない。
小さな抵抗だった。


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