"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
この平家に来てから、毎年夏になると咲き誇る大輪の向日葵を眺めるのが好きで、心待ちにしている。
けれど、それが決して自分に向けられたものではないことも、それを贈るべき人が他にいることも知っている。
小さい頃からずっと一緒にいた。
ずっと好きだと言ってきた。
向日葵の花だって贈ったこともある。
けれど彼の心を動かすことはできなかった。
向日葵を贈られる相手は大洋の心を動かし、愛されている人。自分にはできないことが、できた人。
そう思うと、美しく、可愛らしい大好きな向日葵も何だか憎らしく思えてくる。
一つも枯らさないという大洋の思い通りに一つも枯れないで欲しいと思っているのに、一つくらい枯れてしまえと思ったり。
二人で見れる日を楽しみにしているのに、来なければいいとも思っている。
心がぐちゃぐちゃで、日を経る毎に嫌な自分が生まれてくる。それが嫌で仕方がない。
醜い心を持つ自分が、大洋に愛されるはずがない。更に想い人に勝てなくなるのを分かっているのに心は止まらない。
せめて口にしてしまう前に大洋が止めてくれて良かったと心底思う。
今年が最後の夏になるかもしれない。
けれど、依然、何も変わっていない。
変えられていない現状に切羽詰まる思いも相まって、涙が止まらなかった。