"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
この時の俺には想像もつかなかった。
ついにGWの日を迎え、待ち合わせの駅へ向かう。
夏に向かって少しずつ暑くなってきた今日この頃。
帰省もあってか海辺に人が集まっていた。
今日はサーフィンをしている人は見えず、黄色い歓声も聞こえない。
ということは大洋は今日は仕事なのかもしれない。
ぼーっと海を眺めているうちに酒井が乗った電車が来た。
「よっ」
ポンと、肩を叩かれる。
声の調子がいつものものだったので、何だか拍子抜けしつつ振り返る。
パーカーにロングスカート。
最近では見慣れてきたスカート姿の酒井だが、これまでを考えればまだ見慣れない。
何となく手は繋がず、お互いの近況を話しながら坂を上った。
「そういえば、今日千葉崎来るの?」
平家についてから最初の質問がこれだった。
「来ないけど、なんで?」
今日は遠出しない代わりに俺の家でダラダラ過ごす予定だった。デートと言うには安っぽいけれど一応、家デートになる。それは酒井もわかっているはずだ。
「千葉崎がメッセで俺もいこっかなぁとか言ってたから」
「あいつ俺が誘った時は邪魔になるから来ないって言ったくせに」
「じゃあ、やっぱり来ないってことか」
ちょっと残念そうなのはなんでだ。