"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「来て欲しかった?」
「そう言うわけじゃ無いけど」
テレビのリモコンを触り、借りてきたディズニー映画を再生する。去年公開されたばかりの作品で話題になったもののお互いに観ていない作品だった。
ディズニーを選んだのはプリンセスもので無い限り恋愛要素は薄めだろうという理由もある。
「緊張するじゃん」
画面ではお馴染みの城の映像が流れ、隣からはか細い声が聞こえてきた。
横目に見れば立てた膝に顔を埋めていた。
今日はいつも通りだな、と思っていればそうではなかった。お互いに緊張していたんだ。
「俺には来ないって言ってても、酒井には行こっかなって言ってたなら一回確認した方がいいかもな」
机の上のスマホを取ろうと手を伸ばせば、先に酒井が俺のスマホの上に制止するように手を置いた。
「違う。きて欲しいわけじゃ無いから。多分あいつもからかっただけで。……連絡したらあいつ来るでしょ?だから、」
酒井が次の言葉を紡ぐことはなかった。