"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる


あぁ、なんだ。
連絡が来なかったのはそんなことだったのか。

連絡先は流石にキモかったかとか、あの当時は色々心配していたけれど、あれからも何も変わらず接してくれるので今はなんとも思っていなかったが。

それでも、ホッとした。

「よかった」

「良くないよ!個人情報の紙をなくしたんだよ?本当にごめんなさい。すぐにでも謝るべきだったのに、一年も経ってしまったことも」

「仕方ないですよ。あの時は本当にしんどそうでしたし。家の中で無くして見つからないならきっとゴミに紛れちゃったんでしょうし、大丈夫ですよ」

「町田くん、そこは怒らないと……」

「怒れないですよ。それこそ無理です。じゃあもう一度教えるので、今度は無くさないで下さいね」

ルーズリーフを半分に切って大きく電話番号を書いた。これだけ大きいと流石に無くさないだろう。

それに、今日は彼女も元気だ。


「もしもの時でも、食材が余って困った日でも」

「ありがとう。今度は無くさない。私の番号……って、町田くんバイトは大丈夫?」

「あ!」

スマホ画面に示された時間は電車まで十分も残されていない。

「すみません!また今度教えて下さい!」


慌ててリビングに戻ろうとして、足踏みをする。
これは今伝えておかないといけない。


「旦那さんにも教えておいて下さい!受け取ってもらえるかは分からないですけど、やっぱり相沢さん……奥さんにだけ教えるのってちょっと良くない気がするので!すみません、行ってきます!」

「いってらっしゃい!気をつけて!」


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