"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
外に出ると、太陽は変わらず俺を焼こうとしている。時々吹く風が唯一の救いだ。


玄関に入ればドッと汗が流れた。中はまるでサウナのように蒸し暑い。

一歩外に出れば日差しは強いがカラッとしている。暑いの種類は違うが、外の方がまだマシだと思える。

琴音の平屋は暑くはなかった。外よりも中にいたいと思えた。

なんでだ。

とにかく、涼しくしようと部屋中の窓を開け、風を通す。ムワッとした空気が外に出ていき、一先ずサウナ状態からは脱出。

冷蔵庫の中に食品を詰める作業がこんなにも愛おしいと思える日が来るとは思ってもみなかった。

前のアパートは風呂入って寝るだけの場所だったからか、昼間の暑さを味わうことがほとんどなかったが今日理解した。地獄だ。


「同じ造りの筈だよなぁ」


何が違うんだ。

琴音のことだから窓を開けっ放しにしていたのか、冷房をつけっぱなしにしていたのか。

そういえば、"東京から追っかけてきた"というのは何だったんだろうか。坂も日差しもちっとも得意そうじゃないのに、わざわざ何を追いかけてきたのか。


それに、玄関にあったサーフボード。似たようなものを俺は昨日見た。その持ち主は坂を上って行った。


あれ。


まさか、な。
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