"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
約一時間かけて我が家に到着。


夏の日差しとアスファルトの照り返しにはまだ慣れないが、道のりそのものには慣れてきた今日この頃の俺。

だが、後ろの二人はそうではない。一応、運動系サークルとはいえ、あの坂の長さはキツかったんだろうな。

「やっと着いた〜」と、喜んでいる二人には申し訳ないが、締め切られた家の中の暑さを暫く味わってもらおう。


案の定、部屋の暑さに二人はブーブーと文句を垂れた。


「俺一人で住んでるんだからしょうがないだろ」

「まぁね〜。しっかし、広いなぁ。三人で住めるぞ」

俺と変わらない身長の千葉崎が寝転んでも広々とした居間。他に二部屋あるし、住めないことはないが。


「いいね〜!三人で住んじゃう!?」


酒井の提案に俺は即答で嫌だと答える。


「なんでさ!ケチ!」

「そりゃあ、お前が一応は女だからだろうよ、酒井。きっと俺だけなら許してくれる。な、ゆ〜君?」

「早く昼飯の準備手伝え」

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