"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
夜までゲームをして酒井が夜ご飯を作って、それを三人で食べて、くだらないことを延々と話した。
そしたら、あっという間にお開きの時間だ。
「折角同じ大学なんだし今度は泊まらせてよ〜」
「いいよ」
「やったね!彼女も呼んでいい?」
「変なことすんなよ」
「わかってるって〜!その時は酒井も!な?」
不意を突かれたのか、酒井はビックリした顔をして、珍しく俺の顔を窺うように見た。
「サークルの時でもいいし、いつでも来いよ」
「………いいの?やった!」
「その代わり、お前は親にちゃんと言えよ」
いくら見た目が少年とはいえ、さすがに女子を許可なく泊まらせる勇気はない。
喜んでいる彼女に釘を刺すように言うと何度も頷いていた。
そんなに喜ぶことか?
と、思ってしまうが、大学が違うから仲間外れになっていると思ったのかもしれない。
そんな酒井に真っ先に気づいた千葉崎はなんだかんだよく見ているな、と思う。
そういうところがモテるのかもしれないが。
「折角海もあるし、水着もいるよなぁ。酒井、彼氏作り頑張れよ〜」
「は?」
そうやって地雷を踏もうとするのは理解し難い。
部屋に戻ると出しっぱなしのゲーム機、台所には三人分の食器。さっきまで賑やかだった部屋が静になっている。
一緒だと喧しいと思うのに、いざ離れると寂しい。なんだかんだいいつつ、あいつらとの関係性が好きなんだと思う。
毎日四六時中一緒なのはうるさすぎてごめんだが。
静かすぎるのも困りものだ。