"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる


「ね!あったでしょう?」

パチっと目を開けた琴音と目が合い、頷く。

「シミってない方がいいんじゃないですか?」


俺は特に表情には出さず、本来隠したいはずのシミを見せてしまう琴音に雑草を抜きながら聞く。


「そりゃあ、ない方がいいよ〜。でも、町田くんが同い年くらいに見えるっていうから全然違うんだよ!騙されないで!って思って……。シミなんてできれば消しちゃいたいのよ?いつまでも綺麗でいたいし。……まぁ、時々はサボっちゃうんだけど」


時々はサボってしまう、というのが本当かどうかはさておき。

シミがあったからと言って、歳の差があるということにはならないのでは、というツッコミはした方がいいのだろうか。

いや、今、彼女の中の「十歳の年の差」という違いの例はこれしかなかったのだろう。

もしくは、これも男には分からない女心の一つなのかもしれない。

触れずにいるのが吉だと思い、「そういうものですか」と、返す。
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