"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

しばらくして、辺りを見渡せば雑草はほとんど抜き取られていて、琴音の付近には抜き取られた雑草の山が幾つもある。

俺の方が先に始めたというのに、いつのまにか大きく差が開いていた。

もう終わりに差し掛かっているのに今更ながら抜き方のコツを聞き、実践するとあっさりと抜けてしまった。

もっと早く聞いておけば良かった。

それが顔に出ていたのか、琴音はクスクス笑う。


それはなんだか子供のように見られている気がしていい気がせず、少しふてくされたように「大人だから知ってるんですか」と、問えば琴音は頷いた。

「大人は時間が欲しいからね」と。


俺にはまだ分からない時間の有限性に顔をしかめていると、琴音は肩をすくめて微笑んだ。


「きっとすぐだよ。あっという間だよ。もうすぐ夏が終わるように。……この庭の雑草が抜き終わっちゃうように、ね」


真上から攻撃していた太陽が今では傾き、眠りにつく準備を始めている。

今はまだ、日が差す時間は長いが秋が来ればあっという間に日は短くなる。




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