"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
大学2年、秋。
頑張ってみようか。
「うわ〜お、夏休みが始まる前に付き合い始めた奴らのほとんどが見事に破局してるんだけど!」
千葉崎の視線の先にいる一年生の男女は夏休み前まで良い雰囲気だったが、今では互いの視界に入れないようにしているのが丸わかりだ。
他には堂々と「別れましたーー!」と宣言する三年生もいる。
それは分かるが、他には見当たらない。
「そんなにいるか?」
「めっちゃいるじゃん!」
「えー」と、口に手を当て驚愕した目で千葉崎が俺を見る。残念ながら、分からん。
大袈裟な程、大きなため息をついた千葉崎は俺の肩に手を回し、ヒソヒソと「右を向け」という。
近づいた顔を押し返し、言われた通りに右を向くと他大学の女子を中心として何やら憤慨している女子の群れがあった。
「いいか。あの真ん中の子は四年の先輩と夏休み前に付き合い始めたんだけど、先輩がほんの数週間で浮気して破局した。じゃあ次は左を向いて」
大人しく従うと、三年の先輩が男三人で楽しそうに会話している。
「一番奥にいる先輩は今はそんな素振りはないけど、ほんの少し前までめちゃくちゃ悲しそうな顔でスマホを見てため息をついていた。思うにあれは彼女と別れたんだろうな〜」
「それだけで別れたとは限らないだろ」
「いやいや。そろそろ事実確認したくなって電話する頃だと思うよ〜?」
千葉崎が言った途端、先輩はスマホ片手に席を外し、ソワソワと体育館の外へ出て行った。
「ほら」と、得意げな千葉崎に「分かんないだろ」と、再度言ったのだが。
後に、先輩が「俺はまだ別れたくない」と、電話で話しているのを聞いた二年女子により、先輩が彼女と別れたことが明るみになった。