"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
どうやら、あれは揶揄っていた方で合っていたらしい。千葉崎の能力を過大評価していたみたいだ。
だが、今更誤魔化すこともできない。
「前に言った、隣の家の美人のことだよ」
「あ、隣の美人さん相沢さんって言うのか。……ってほらー!あの時の俺合ってるじゃ〜ん!な〜んか、ゆ〜君の態度がおかしいと思ってたんだよなぁ」
あの日のことをきっちり覚えていたということは、その時点で琴音に対する思いがばれていたということか。
俺は全身を掻き毟りたいような羞恥を誤魔化すべく、千葉崎のさっきのネタを拝借することにした。
「さっきは相川ゴリラの方を指差してたくせに」
「いや、それはあんまりにも急でびっくりして。……っていうか、俺、その美人が相沢さんって知らねーし!そんなのわかるわけないだろー!」
確かに、そこで隣の美人と相沢さんが繋がったら、鋭すぎて怖い。
俺たちは一体何の話をしているんだ。
夏休み終わって、後期一回目のサークルで別れたカップルの話だったり好きな人の話をしたり。
女子高生の恋話かよ。
「あのさ、それって酒井には言うのか?」
「お前が鋭いから先に言っておいただけだから、酒井には言わねーかな。言わなきゃバレなさそう」
「いや〜、それは、どうかな〜?」
また揶揄っているのかと思えば、千葉崎はどこかしどろもどろと言うか、歯切れが悪い。
「ってか、何で急に認める方向に?この前は否定してたじゃん」