"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「好きです」
「良かった!不格好だけど熱いから木の棒に刺したままで渡すね」
はい、と差し出された棒は琴音が掴んでいる所を除けば持ち手は短い。必然的に少し、触れてしまう。
軍手越しでも、緊張した。
「多分焼けてると思うんだけど、固かったらちょとだけレンジで温めてみて!」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
ふふっと、笑った琴音は残りの芋を回収し、手際よく火を消す。
普段は抜けているだけに、当たり前のことなのにちゃんと火を消せたことに感心してしまう。
奥を見ると作物が植わっている畑と花が沢山咲いている花壇とがあった。
「凄いですね。家の管理だけでも大変なのに、庭の手入れもして、あれだけの量の作物と花を育てられるなんて」
「根気はいるけど楽しいよ!でも流石に全部私が育てた訳じゃなくてあの花壇は……あ。そうだ!町田君も何か育ててみる?」
キラキラとした目で見つめられ、思わずドキッとしたが、首を横に振る。
「絶対無理です!草抜くだけでも大変なのに、作物の世話なんて無理です!」
「食費浮くのに?折角立派なお庭があるのに?」
「んんん」
その通りなんだよな。
折角あれだけ広い庭があるなら何か育てられるな、とは常々思っていたが、何せ世話を最後までできる自信がない。
いつのまにか腐らせるような気しかしないのだ。