"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
真っ暗闇だった縁側に光が差し、風がふわりと舞い込んで来る。


暗がりの中にいたせいで目がチカチカする。

眩しさに目を細めると、真っ白でぼんやりとした世界に少しずつ青が混じっていき、何か凸凹とした形が浮かび上がる。


目が慣れてくるとその正体がわかった。


つばの広い麦わら帽子、チェックのシャツにオーバーオール、長靴。

まるでどこかの農家のような格好をした女性が片手にスコップと雑草を持って立っていた。


それもぽかーんとした間抜け面で、だ。


不思議なことに、そんな格好でそんな表情をしていても何かの雑誌の撮影かと思えるくらいに美人。


帽子の影ではっきりと顔が分かるわけではないが、間違いなく美人だということはわかる。


寧ろ陰影効果か、それとも単に太陽の光か、彼女の周りがキラキラと輝いて見える。


…………って、待て待て待て。



この家無人じゃなかったか?

あれ?もしや。


マジで訳あり物件?



夏の蒸し暑い日だからか、それとも冷や汗か。
首筋から背中にかけて汗がツーっと伝っていった。



< 6 / 259 >

この作品をシェア

pagetop