"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「そうなの?でも、モテるだろうからすぐ彼女できるよ!大学生という青春を謳歌しよう!」
「はぁ」
何だか慰められているような気がするのは気のせいだろうか。それにモテるだろう、なんてどこで判断されたんだ。
確かに身長には恵まれて、勉強も運動もそこそこできたので高校の時はよく告白された。大学生になって茶色に髪を染め、眉毛もちゃんと整えるようになったし、彼女なんてすぐにできるだろうなんて思った時代もあった。
だけど、大学生になってから告白されたのは一回。
一回でも十分な数だが、彼女持ちの千葉崎は毎月告白されている。モテるとは千葉崎みたいなことを言うのであって、俺みたいなのは当てはまらないのではないだろうか。
一応、付き合ったことはある。
今までに付き合った人は二人。
高校の時に一人。大学一年生の時に一人だ。
高校では二年近く付き合って破局、大学では付き合ってすぐに別れてしまった。
どちらも告白されて付き合って、振られて別れた。
告白されても結果的に振られる俺がモテるとは言い難い。
お世辞だな。
「どういう所がモテそうだなんて思ったんです?」
ちょっと意地悪をしてやろう、そんな気持ちだった。
ダッセェ。この行動こそモテそうにはない。
「んー。まず、身長が高い!高所作業が任せられるでしょう?体格がいいからいざという時守ってもらえそうでしょう?」
「それ、便利屋じゃないですか……」
確かに、琴音のような美人ではないし、千葉崎のように愛想もないので、顔から来るものはないだろうとは思っていたが、全て身体とは。
もう少し褒める所があってもいいのでは?
「モテそうだなぁーって思う理由は他にもあるよ!えーと、礼儀正しい!真面目そう!さりげない気遣い?あっ!とっても親切!」
何故途中で疑問形だったんだ。
それでも、これだけたくさん挙げられると逆に恥ずかしくなってきた。顔が熱い。意地の悪さに天罰が下ったんだ。
純粋培養のこの人には効かない方法だった。
照れを隠すように首の後ろを掻いていると、琴音が目を合わせた。
「町田くん、君はとっても優しい子だよ。だからきっと、今にいい人が現れるよ」
それは背中を押されているようで、突き放された様なそんな言葉。そのいい人というのはいつか出会う彼女以外の誰か、だ。
きっと、また何にも考えていないのだろう。
少しチクリとしたが、それでも褒められたことが嬉しかった。