"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
思えば、年の差がどうだとか、彼氏はいるのかとか、そんなことを気にしたことはない。発せられる言葉の一つ一つで一喜一憂をしたこともない。
今までドキドキしたりモヤモヤしたり、したことがあっただろうか。
付き合ってきた彼女たちのことは付き合っていくうちに好きになっていたのだと思っていたが、違ったのだろうか。
今までとどう違うか、と言われても答えられないが、少なくともここまで誰かに急速に心を惹かれたことはなかったと思う。
千葉崎には隣人という関係でいいなんてカッコつけたことを言っていたが、彼氏がいないのなら頑張ってみてもいいんじゃないか?
女性にとって三十という数字は何かと焦らせる数字かもしれないが、今まで彼氏がいたことがないとあっけらかんと話す琴音からは危機感のようなものは感じられなかった。
……ただ、もっと時間が欲しいと言っていたことは気になるが。
どうせ最低でも来年の夏まではこの平家にいるんだ。
その間、彼女が引っ越さない限りは隣人だ。
頑張ってみようか。