"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
撮影の小道具のように思えたスコップも今は凶器に見え始めてくる始末だ。



間抜け面した農家風美人幽霊なんているのか?
………いるかも。いてもおかしくはない。


ヤバイ、と感じ始めた直後、女はパッと花が咲くような笑みを見せた。


それが可愛すぎて、不覚にもキュンと鳴ってしまう俺の単純な心臓。


しかも、見惚れてしまって、タッタッタ、と軽い足取りで目の前までやってきた女から逃げることも忘れていた。


「あなたがここに引っ越してくる大学生さん?」


心地いい柔らかな声が鼓膜を震わせる。


小柄に見えたが案外身長は高い。とはいえ、縁側に立つ男との距離はかなりあるはずだがふわり、と何かの花の匂いがした。


栗色のふわふわとした長い髪は後ろに一つで纏められている。だが、纏まらなかったのだろうか。それともオシャレで残したのかは分からない顔横の髪が汗で顔に張り付いていた。


よく見れば全身泥まみれだ。
それなのに、花の匂いがする。


「…………そうです」

「わ〜!やっぱりそうなのね〜!お隣さんか〜」

「お隣さん?」

「あ」


しまった!と言わんばかりに、いそいそと雑草とスコップを地面の上に置き、麦わら帽子を取る女。

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