"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
あっという間に朝を迎え、電車に揺られつつ大学へ向かう俺と千葉崎。
ふと、財布の中にある無料券のことを思い出した。
「俺のとこの出し物のタダ券、一枚しかないけど千葉崎か彼女かどっちか使わない?」
「俺らはいいや。言ったろ〜?貢献しに行くって。その代わり俺んとこの出し物にも来てもらうけど!」
「言われなくても行くけどさ、これ余ってんだよ。使わないともったいないんだけど」
「酒井がいるじゃ〜ん!」
確かに、当初は千葉崎か酒井のどちらかに渡すつもりだったので、千葉崎が貰ってくれないなら酒井に渡したいところだが。
「文化祭最終日だぞ?ミスコンの結果発表もあるし、待ち合わせしたとしても合流できるか分かんねーだろ」
「だ〜いじょうぶだって!酒井ならきっとワッフル食べにきてくれるからさ!その時に渡せばいいんだよ」
「俺、シフト言ってないんだよ。昨日か一昨日に来てたら今日は来ないかもしれないだろ」
「いやいや、来ますよ?酒井なら来る。何故なら俺がゆ〜君のシフトを教えといてあげたからね!」
これはお礼を言うべきなのか、迷うところだが一応言っておこう。酒井にいうのを忘れていた俺に非がある。
とりあえず、まだこの無料券は財布の中にしまっておくしかない。
「もう一枚は相沢さんに渡しちゃったんだ?」
「そうだよ。何なら、既婚者だって発覚した日に渡したわ。知る前ではあったけどな」
「うわぁ、ご愁傷様です」
手を合わせ拝む千葉崎は無視するとしよう。