"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
だから、高校のクラスメイトと改めて事実を言われたとしても悲しくはない。だってそれが事実だから。
ただ、これだけたくさんの人が変化した彼女を褒めてくれるのに悠介からは何一つ言葉がないのが腹立たしかった。
もう何でもいいから、何か一言でいいから言ってくれればいいのにと思っていたら友人が助け舟を出してくれた。
漸く悠介から出た言葉は「酒井ってそんな格好もするんだな!」なんて、褒めも貶しもしないようなものだったが。
なんだか力が抜ける。
こういう奴だったと諦めて、ワッフルを口に入れれば美味しくて思わず笑みが出る。
もういっか。ワッフルが美味しいし。無料券をわざわざ用意してくれてただけでもいいや。
そんなことを思っていたら急に爆弾が投下された。
「なぁ、酒井。それ、似合ってんな」
さっきみたいに言わされて無理やり出した言葉なんかじゃない、本心からの言葉。
決して、綺麗になったとか、可愛くなったとか、直接的な言葉ではないけれど、絵里には十分だった。
全身の血が熱くなって、真っ赤に染まる。
単純な自分が憎い。
でも、ホッとした。
ーーー似合っているのか。よかった。
「もっと気の利いた言葉あったでしょうに、あんなんでいいの?」
友人からは不評だった。
彼女達は持てる技術の全てで絵里を変身させたので、もっと直接的な言葉を期待していたのだろう。
だが、絵里は満足だった。
元々悠介は彼女はともかく、女子の見た目の変化に対して気の利いた言葉を言えるタイプじゃない。
そういうのは千葉崎のような男が得意とする。
「あ、お土産渡し忘れた」
すっかり忘れていたが、こちらが本題だった。
友人には先に行くように伝え、踵を返す。
ーーー悠介も休憩に入るって言ってたし、急がなきゃ。
絵里は急いだ。
幸いそんなに離れてもいなかったのですぐに屋台には着いたのだが。