美術室のユーレイ
でもまだわからないことがある。
叶多くんが本名ではなく、偽名を使った理由が…。
私の気持ちが通じたのか、アカリは続きを話し始めた。
「彼は死んだ後もユーレイとしてずっと舞空を探していたんだ」
「私を…?」
アカリは頷く。
「そして高校生になったとき、やっと舞空を見つけた。舞空は遠くに引っ越していたから見つけるのに4年もかかっちゃった」
私は忘れようとしていたのに、叶多くんは私のことを見つけようとしてくれていたの?
胸がギュッと苦しくなった。
「でも見つけたところで、霊感がなかった舞空は、彼と話せるわけでもないし、ましてや見えるわけでもなかった」
たしかに私は霊感がないから姿を見せるまで一切気が付かなかった。
「そんな時、彼の前に神様が現れたんだ」
「神様?」
そのワードに私は反応した。
思えば前に叶多くんは、そんなことを言っていた気がする。
『此岸のものに姿を見せる権利を与える。その代わりに、悪霊を倒すように命じられた』って。
「その神様に彼は『舞空の前に姿を現したい』と願った。神様は引き受けた。でもその代わりに…」
アカリはそこまで言って黙ってしまった。
私が付け加える。
「『悪霊を倒すように命じられた』でしょ?」