美術室のユーレイ
部活の時間が始まると真っ先に部室に行く私たちだけど、叶多くんが「たまには屋上へ行こう」と言うことで屋上へ来ている。
小学生のころ、叶多くんが初めて発案してくれたポーズで絵を描く。
柵に手をかけ、景色を眺めるポーズ。
あの頃の叶多くんと比べると、あたりまえだけどだいぶ成長していて、下書きも大きくなる。
前に叶多くんに絵を見せた時『成長したね』と言われたのは小学生のころの私と比べたものだった。
あの時はなんでそんなことを言われたのかわからなくて、叶多くんを問い詰めちゃったっけ…。
消えるはずだった記憶が受け継がれたから、叶多くんとのユーレイ時代の思い出も忘れていない。
アカリのことも忘れていないけど…
もう私は此岸と彼岸との境の人間ではなくなってしまったから、アカリがもしまたあの空き教室にいたとしても、見えないし、会えない。
悪霊も見なくなったし、空の色も変わらない。
そもそもいるのかもわからない。
アカリとは本当のお別れになっちゃったな…。