美術室のユーレイ
「すごい!すごいよ美斗くん!」
「だろ?俺もこの時は優秀だったから〜」
一切謙虚な態度を見せない。
なんか、凄さが半減。
でも1度見たら引き込まれるような、目を逸らせられないような、不思議な感じの迫力がこの絵にはあった。
コンクールで賞を取るのも納得。
「あ、だから」
私は美斗くんのブレザーの袖を指さす。
「だから袖に黄色い絵の具の跡がついてるのか」
美斗くんは袖を確認し、なぜか曖昧に笑った。
「そ、そう。絵を描いているときにつけちゃって。取れなくなっちゃった」
少し歯切れが悪い喋り方。
どうしたんだろう。
「ねぇすごい?俺の絵すごい?」
少し考えていると美斗くんからのしつこい主張。
…もう考えるのもバカバカしくなってきた。
「あーうん。すごいすごい」
あんまり褒めると調子に乗りそうなのでここまでにしておく。
「すごいでしょーすごいでしょー」とまとわりついてくるユーレイ(美斗くん)を無視し、私は改めて絵をまじまじと見る。
本当に素敵な絵。
私もこんな絵が描けたらなー。