溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
★★★
隣ですやすやと眠る風香の寝顔を見つめ、柊は思わずニヤついてしまう。
彼女は自分に寄り添い、抱きついてくる姿が愛らしいと感じられる。
そんな彼女の額についた前髪を指でよけ、そこに小さくキスを落とした。
「ん…………」
すると、風香は何かを感じたのか、口元を緩めた。そんな表情を見ると離れがたくなるが、柊は彼女を起こさないように、ゆっくりとベットから降り寝室から出た。
真っ暗なリビングに戻り、柊は持っていたスマホを操作した。
そして、部下である和臣に電話をした。
すると、和臣はすぐに電話に出た。
『お疲れ様です』
「夜遅くに悪い。今、いいか?」
『はい。大丈夫です』
「島崎輝が動いた。気になるので一応調べておいてくれないか」
『わかりました。それで、風香さんは大丈夫そうですか?』
「あぁ……落ち着いてる」
『そうですか。で、見つかりそうですか?』
「…………まぁ、もう少しで出てくるはずだ。焦るなよ」
『了解しました。では、島崎についてわかったら電話します』
「頼んだ」
そう言うと、柊はすぐに通話ボタンを切った。ふーっと大きな息を吐いてソファにドサッと座り込んだ。
「………そろそろ茶番はおしまいにしよう。そうだろ?風香ちゃん……」
柊はそう呟くと、天井を見上げたまま目を瞑った。
やることは山積みだ。
だが、先を越されるわけにはいかないのだ。
「風香ちゃん………ごめんね………」
頭を過るの彼女の泣いた顔だ。
そんな表情など、もう見たくもない。
けれど、きっと彼女は泣いてしまうだろう。
それを想像するだけで心苦しくなってしまう。だが、柊はそれを止める事は絶対に出来ないのだ。
ギリッと爪の跡が掌に残るぐらい強く強く手を握りしめる。
どんな事をしてでもやると決めたのだ。
それで風香が悲しむとしても。
それが2人の正義なのだから。