溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「綺麗だよ。風香ちゃんは色っぽい洋服もよく似合う」
柊は風香の腰に手を添えて、そのまま自分の方へと引き寄せてくる。
風香が彼を見上げると、彼の前髪が風香の顔にかかりそうになる。柊の吐息がかかりそうな程近く、風香はドキッとしてしまう。
綺麗な表情に加え、いつもとは違う大人っぽい服装や髪型に、どうしても男の色気が増しているように感じられるのだ。
「………柊さん、何かいつもと違って恥ずかしい………」
「風香ちゃんだって、色っぽくて………我慢してたのが無理になりそうだ」
「そんな………」
風香は、恥ずかしさのあまりに逃げ腰になってしまったけれど、それを柊は許すわけはなかった。がっしりと腰を掴んだ後、耳元で柊が囁いた。
「夜は、家で2人きりのお祝いしよう」
「う、うん………」
風香がそう返事をすると、満足したのか柊は手を離してくれた。
その後は、いつも以上に手厚くエスコートをしてくれる。お嬢様というよりお姫様のようだな。そんな風に思って、風香は一人恥ずかしくなってしまった。
久しぶりの自宅やスーパー以外での外出。
柊は誕生日のお祝いだけではなく、風香が気分転換が出来るようにと考えてくれたのだろう。
柊が行方不明になり、記憶まで失くしてしまった時には、こうやって自分の誕生日を祝って貰えるとは思わなかった。
彼の手の温もりを感じ、幸せを噛み締めながら、風香は彼の横を微笑みながら歩いたのだった。