溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
風香は言葉にしてからハッとしてしまった。
酔っていたとはいえ、大胆な発言をしてしまったのだ。風香は、咄嗟に彼に「ち、違うくて………それは、その………」と、手を大きく振って彼から少し体を離した。
女の自分から誘うなど恥ずかしい。
はしたない女だと思われてしまう。
酔いに任せてそんな事を言うなど若い女の失態でもないのだから………。自分の愚かさに、つい瞳がうるっとしてしまう。
彼の事など見れるはずもなかった。
「………そんな顔しないで。俺は嬉しいのに」
「………だって………」
柊はレストランの中だと言うのに、風香の肩を抱き寄せて、耳元で内緒話をするように囁く。
「俺は今日君を貰うつもりだったよ。さっそくプレゼントのお返しが欲しかった。欲望深い男だよ」
「そんな事ないよ……柊に対してそんな事思わない。だって、私だって…………っっ!!」
そのまで言うと、柊は突然風香の耳をペロリと舐めた。
ぬるりとした冷たい感触と、甘い水音が耳の中に響き、風香は体を震わせた。風香の全身が熱を帯びてくるのがわかる。
「しゅ、柊さん!?」
風香は小さな声だったが、彼に向かって強い声で名前を呼んだ。店内をキョロキョロしながら、誰にも目撃されていないかを確認した。
「大丈夫だよ。誰も見てない」
「だからって……」
「ねぇ、風香ちゃん……」
「ん………」
テーブルの下に置かれていた右手を柊の大きな手が包んでくれる。
いつもよりも手が熱いのは気のせいではないはずだ。
「お互い欲しがりみたいだし、すぐにでも家に帰りたいぐらいだけど………最後のデザートだけいただいて帰ろう。それとも、家に帰ってから甘いデザートにする?」
「………デザート食べたいです」
「ふふふ………わかった」
風香は、視線を逸らしうつ向きながらそう返事をすると、横から彼の少し余裕そうな声が聞こえてきた。
運ばれてきたキウイのシャーベットを一口食べながら、熱くなった体を冷ましたのだった。