溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
27話「隠された宝物」
27話「隠された宝物」
☆☆☆
夜中にフッと目を覚ますと、そこはいつものベットの上。隣にはぐっすりと眠る柊。事後にそのまま倒れるように寝てしまった2人の裸のままの肩が布団から出ていた。
外からは雨音が聞こえる。そろそろ梅雨入りの時期だな、と起きたての朦朧とした頭で風香はそんな事を思った。
風香は薬を飲んだ後、効きすぎてしまったのか具合が悪くなってしまい倒れてしまった。そんな所を柊に見られてしまった。彼は前も風香が頭痛に苦しむ姿を見てしまっている。そのため、とても心配しているのだ。
「…………でも、どうして「ごめん」なの?」
風香は寝ている柊を見つめながら、消えてしまうほどの小さな声でそう問いかけた。
彼はまるで自分のせいで風香が体調不良で苦しんでいると言っているようだった。
けれど、彼は記憶を失ったままのはずだ。それならば、風香が柊が忘れてしまった事で薬を飲み始めたと知らないはずだった。
だとすれば、何を思って「ごめん」と言ったのか、風香にはわからなかった。
だが、わかった事もあった。
彼も風香と同じ不安を持っているという事だ。
彼は「君が傍に居るって感じたいんだ」と言った。それは、風香が目の前からいなくなってしまうと思っているからだ。
何故、そんな事を思ってしまったのかはわからない。けれど、風香は柊を離したくないし、離れたくないと思っている。そんな心配など不要だと彼に伝えていきたいと思った。
それに、風香の方こそ不安だった。
彼が記憶を取り戻したら………。そして、思い出したとしても、「別れたいから別れたのに」と言われてしまうのではないか。そう思うと、怖くなってしまうのだ。
それならば記憶なんて思い出さないままで言い。そんな最低な事まで考えてしまうのだ。もし、メモリーロスを服用していたとしたら、体に害を及ぼすと言うのに。