溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「…………柊は私の事、好きでいてくれる………?」
「………風香ちゃん、どうしたの?急にそんな事言って………」
「ご、ごめんなさい。私、やっぱり美鈴の所に行く事にする……柊さんも気を付けてね」
「ふ、風香ちゃん?!」
風香は、そう言うと彼が呼び止めるのも振り切って、寝室から飛び出した。
そのまま玄関に置いてあるキーケースとポケットに入れてままになっていたスマホだけを持って家を飛び出した。
「一人で悩んでるなら相談してくれればいいのに………。って、私も柊に話してないことがあるからお互い様なのかな………」
夕暮れ時で赤く染まった街を風香はトボトボと歩く。
先ほどの柊は何故か刺々しい雰囲気で、必死に本当の感情を隠しているように感じられた。
彼は何か秘密を持っているそんな風に風香は思えたのだ。
秘密があるとしても、結局は柊の事を何もわからなかった。
勇気を出して聞いたのに、何もわからなかったのだ。
彼も泊まり込みでなかなか家に帰れないと言っていたので、柊と距離を置いて状況や気持ちを整理しようと思った。
ため息をつきながら、風香はスマホで美鈴に連絡をとった。
部屋を飛び出した風香を柊は追いかけてくる事はなかった。