溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




 誰もいない、ぼんやりとした空間の中。誰かの声が聞こえる。
 これは、聞き覚えのある声。だけれど、その人達が話している話の意味は全くわからない。



 『それなら私かやる!』
 『君を危険になど巻き込みたくないだ。だから、距離を置いて欲しいと頼んだんだ。お願いだ、わかってくれ』
 『そんなの嫌よ。何でそんな事をしてたのか話したいよ。私にも責任がある!』
 『君のせいじゃない。だから、君は………』
 『…………自分が情けないよ』


 やっぱり知らない話しをしている。
 

 けど、何故が頭の中でひっかかるものがあった。これは誰と誰の会話?

 男の人と女の人の声。

 男の人の声はすぐにわかる。大好きな彼、柊のもの。けれど、柊はとても切迫した雰囲気で話しをしている。
 女の人は誰だろうか。焦った声だ。
 けれど、この声も聞いたことがある?


 風香は朦朧とする頭でその会話は聞きながら、ある答えに辿り着いた。


 「これは柊と…………私?」


 そう思った瞬間に、風香はまた頭に激しい痛みを感じた。けれど、何かを思い出せそう。なのに、頭に靄がかかっているかのように、そこだけが見えない。


 痛みに耐えながら、風香はギュッと目を瞑った。


 




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