溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を






 意識が戻ったのか風香は先ほど誰かに殴られた腹部に痛みを覚え、ゆっくりと目を覚ました。
 先ほどまでの夢は、必死に思い出そうとするけれど、またすっかりと忘れてしまっていた。とても重要な事だと思ったのだが、もう何の事なのかも何もわからなくなってしまった。

 風香は痛みに耐えながら体を動かそうとした。だが、腕が動かなかった。そして、体も。


 「こ、これは………何!?縛られている………?」


 風香は、やっとの事で意識がはっきりしてきた。自分の状況をやっと理解出来た。
 腕は手錠をかけられ、足首は太い縄で絞められ、ソファに寝かされていた。


 「何………これ?ここは………」


 周りを見ると薄汚れた広いリビングのような場所だった。どこかのアパートなのだろう。灰色のカーテンがしまっており、床には埃がついたカーペット、傷だらけのテーブル、痛んだソファか2つ置いてあった。


 「あ、目を覚ましたな」
 「っっ!!」


 風香をずっと監視していたのだろうか。
 部屋にある唯一のドアの前で一人の男が立っていた。黒のパーカーに黒のズボン。先ほど風香達を襲ったメンバーの一人だろう。
 風香は今の状況から自分は誰かに誘拐されたのだとわかった。やっと現状を理解したが、その途端に体が震え始めた。
 



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