溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
風香の声に過敏に反応し、美鈴は大きな声で怒鳴った。そして、ソファから立ち上がり、高いヒールの靴を鳴らしながら、こちら近づいてきた。
「私はあんたなんて大っっ嫌いなのよっ!!」
「っっ!」
そう言うと、持っていたワイングラスを風香に投げつけた。それは風香の顔に当たり、真っ赤なワインは風香の顔や体、服にかかった。そして、ワイングラスはカーペットに落ちて、コロコロと転がっていく。
血のように赤い液体から甘くて濃厚な酒の匂いが発せられる。それを見た美鈴や周りの男達ら、笑い声を上げて面白そうに風香を見ていた。
「…………宝石はどこ?どこに隠したの………」
「………美鈴………」
「教えなさいよっ!」
「………ぃっ………」
風香の体をヒールで思いきり踏み込む。
ギリギリと風香の体に打ち込まれるような痛みがあり、風香は顔に苦痛を浮かべた。
それでも、彼女に教えるわけにはいかなのだ。ガーネットのありかを。
自分のためにも、彼女のためにも。そして、彼のためにも………。
苦痛に堪えながら、声も出さずに目を閉じながら堪えていると、上から「チッ」と言う舌打ちが聞こ、美鈴は体を離した。
「まぁ、いいわ。方法なんて沢山あるわ」
「………美鈴、もうやめて………」
「止めるわけないじゃない。待ちわびた日がやっと来るんだから。あんたの婚約者がいるせいで上手く動けなくて、かなり時間がかかったけど、それでもこうやって念願が叶うのよ」
「…………柊…………」
風香は涙が一粒流れた。
美鈴の言葉を聞いて、彼の事を思った。
助けが来るとは思っていない。けれど、どうしても願ってしまう。
柊の事を。守ると言ってくれた彼の事を。