溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
風香は彼が目の前から居なくなった後、よろよろとエレベーターに乗り、自分の部屋に戻った。
そして、そのままベッドに飛び込んで体を横にした。
「…………どうなってるの?どうして、柊は私の事を忘れているの?」
混乱した頭の中を整理しようとするが、驚きと酔いのせいで上手く考えられなかった。
けれど、1つだけわかった事がある。
「…………柊………生きてた。よかった………本当によかった………」
今は考えてもわからない事だらけだ。
けど、自分の目の前に彼が現れてくれた。
変わらない笑顔を見せてくれた。
また名前を呼んでくれた。
よかった。安心した。会えて嬉しい。
そう思っているはずなのに、涙が止まらなかった。
もう今は考えるのも疲れてしまった。
明日、また柊に会える。
それだけを楽しみに、風香は目蓋を閉じた。すると、すぐに睡魔に襲われ、風香は月の光りを浴びながら、ぐっすりと眠ってしまったのだった。