溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
34話「暗中模索」
34話 「暗中模索」
自分がメモリーロスを飲んでいる?
柊の話したことが理解出来ずに、風香は唖然としてしまう。
そして、「…………そんなはずは」と、言葉にしながら、自分の手が震えている事に気づいた。
メモリーロスを飲んでいる。それに気づいていなかった事。それに、服用した際の副作用についてを思い出したのだ。それについてはよく知っている。柊が飲んでしまっているの勘違いしていたのだから。
「………本当に、私が飲んでいるの?」
「あぁ………君はメモリーロスを飲んでいるよ。時々、激しい頭痛があっただろう?」
「あ…………」
「あれは、メモリーロスを一定期間内に飲まなかった事で、少しずつ記憶が戻ろうとしていたんだ」
「で、でも……私はメモリーロスなんて飲んでいないよ」
「飲んでいた。………白いカプセルを」
柊の言葉を聞いてハッとした。
確かに白いカプセルの薬は頭痛になると服用していた。けれど、それはサプリメントのはずだった。が、確かに頭痛があるとそれを飲んでいたなと思い出す。
それは和臣から貰ったものだ。そして、彼はメモリーロスを持っていたのを風香は思い出したのだ。
「柊。私、メモリーロスを飲んでいたの?………この間、和臣さんがメモリーロス持っているのをみたの。まさか………」
「大丈夫だ。和臣のメモリーロスは本物だけど、あいつは飲んでいないし、薬の売人ってわけじゃない。………あいつの場合はいろいろ訳ありってやつなんだけど………」
「え?」
「順番を追って話すよ。最後まで聞いて欲しい」
「………うん」
先ほどまであった手の震えは、いつの間にか治まっていた。きっと、彼が自分の手を握りしめていてくれたからだろうと風香には思えた。
けれど、柊から出てきた話の内容は風香が思いもよらないことばかりだった。