溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
35話「作戦中止」
35話「作戦中止」
次の日から、風香は家から離れて生活する事にした。
風香はその提案に乗り気ではなかったけれど、渋々荷物の準備をしていた。
違う場所へ避難といっても仕事があるため、風香は仕事道具を持ってホテルに籠ろうかな、と話していた。
「じゃあ、夜には様子見に来る。何か欲しいものがあった時には連絡して」
「ありがとう」
ホテルのロビーまで風香を送り、柊はすぐに警察に戻ろうとした。
すると、背を向けた瞬間に「柊っ!」と風香に呼び止められた。
「ん?どうした?」
「……………私、柊の事、大好きだから」
「………どうしたんだ、急に………」
風香の言葉な驚き、柊は彼女の元に戻ろうとした。けれど、「ち、ちがう!だから、早く帰ってきてね、って事っ!」と、風香は顔を赤くして困ったように笑った。
そんな様子を見て、柊は愛らしく思いながら微笑みを返した。
「早く帰ってくる」
「うん。………気を付けてね」
風香を小さく手を振って、見送ってくれた。
よくよく考えれば、それが彼女の「大丈夫だよ」というサインだったのだろうと、柊は後になってから気づいたのだった。