溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
自分でも情けないと思う。
好きな人が体を張っているのに、自分は何も出来ていない。守ることすら出来ないのだから。
「俺に考えがあるから後で説明する。……悪いが先に車に戻っててくれないか。風香と2人きりになりたい」
「………わかりました」
和臣は柊の悔しさと悲しさが混じった表情を見つめたあと、ゆっくりと部屋から出ていった。
柊はベットの横に座り、近くで風香の顔に自分の顔を寄せた。
「おまえ、何やってんだよ………俺を心配させて。でも、そうやって友達のために体をはって何かしようとする。そんな風香が俺は好きだよ」
そう言って、眠る風香の頬にキスをした。
すると、ポタポタッと滴が彼女の頬や鼻先に落ち、流れていく。
それが彼女のものではないと気づくのに、柊はしばらくかかった。
「おまえの前で泣くなって、カッコ悪いな……………でも、今回だけは許してくれよ。風香、おまえを守れなくて、本当にごめん。………おまえの気持ちは受け取ったよ。2人で捕まえよう。そして、風香の思いを彼女に届けてくれ。………最後まで彼女を信じてあげてくれ」
柊は、涙を拭いた後、ポケットからスマホを取り出した。そして、先ほど彼女から届いたメッセージを再び開いた。
これは彼女からのSOSでもあり、謝罪でもあり、ラブレターでもあった。
柊はそのメッセージにまた目を通した。
どこから彼女の声が聞こえてくるような気さえした。